自分次第で、風向きは変えられる。
ある日、現場の商品担当者がオンラインモールのサイト上で星一つの口コミを発見した。そこには、郵送で届いた段ボールのなかに商品とは関係のない、倉庫の部品が入っていたと書いてあった。梱包時に紛れ込んでしまったのだろうか。お客様はひどくお怒りの様子だった。急ぎ、倉庫には事実確認をしつつ、商品担当者と共にお客様への対応策を考える。今回はメールでのお詫びだけでなく、当日中に直筆の手紙を送ってはどうかと担当者に提案した。
こういうトラブル時に大切なのは、スピードだと思っている。どんなに心を込めて謝罪をしても、タイミングを逃したら伝わる想いも伝わらなくなってしまう。これはコールセンターに配属されてから、何度も痛感したことだった。入社して間もない頃、「新人だから」という姿勢で先輩の指示を待ってしまっていた時はたいてい、状況が悪化するだけだった。それに自分の少しの対応遅れが、会社全体のミスにつながってしまう怖さも知った。年齢や経験を理由に待ちの姿勢でいるのではなく、今の自分にできることを考えて、早く行動に移す。そういう「機動力」が身につく現場だと感じている。一方で、迅速に対応できてもそこに「心」がなければ、謝罪の想いは伝わらない。お困りごとの内容、お客様のご状況、タイミングなどを考慮して、かける言葉ひとつに細心の注意を払う。相手のご意見の、その裏にある想いや苦悩まで想像しきれるか。ここにお客様の満足度を左右する差があるのだと思う。
後日、商品担当者から連絡がはいり、お客様からお許しをいただけたと報告を受けた。またトラブル後の対応について、星5つのレビューも付けてくださっていたという。僕はついこの間まで、この仕事は「マイナスをゼロにする」仕事だと思っていた。でも自分の向き合い方次第で「マイナスからプラス」にもできる。日々コールセンターに届くお客様の声は、僕らにとってのチャンスなのだと知った。
変わり続ける、老舗企業であれ。
現在はコールセンターと兼任して、お客様からのご意見をもとに、ECサイトの改善やコールセンターの効率化を推進するソリューションチームにも参加している。直近で取り組んでいるのはコールセンターにおける自動音声応答システムの導入。一般的にシステムで電話応答する場合は、ダイヤルプッシュ式が多いのだが、ご高齢の方や一部の方にとっては操作が難しく、コミュニケーターにつなぐよりも時間がかかっていた。そこで数年以内に、すべて音声のみで受注や返品ができるような仕組みをつくりたいと考えている。業界でも前例のない試みではあるが、すべての人にやさしいサービスづくりへの一歩になるといいなと思う。
この仕事をしていると、日々、リアルタイムで会社がより良く変わっていくのを感じることができる。「家具の材質で絞れる検索機能がほしい」「3L以上の大きめサイズをもっと取り扱ってほしい」など、お客様からの具体的なご要望を現場に反映していくことも多い。どれだけMDやマーケターがお客様に寄り添った商品やサービスを作っても、どうしてもキャッチしきれない声がある。だからこそ、僕たちが拾いあげて、社内にフィードバックしていくことに意味があるのだと思う。
お客様の声をもとに生まれる変化は、一つひとつは小さいものかもしれない。でも、そのちいさな変化が積み重なって、DINOS CORPORATIONという会社を大きく変えていく。そして、その先で社会が少しずつでも良い方向へと変わればいい。そんな想いを抱きながら、今日も僕は一人ひとりの声に向き合っていく。